2011年6月21日火曜日

家族の会話は何語で?

 U-18の常連メンバーに、「とっても元気な低学年&しっかり者の中学生」という姉妹がいる。低学年ちゃんが来ると、良くも悪く(?)も定例活動が活気づく。ムードメーカーとして貴重な!!人材だ。
 今日、低学年ちゃんは、母親と一緒にやってきた。お母さんは「わたしも日本語の勉強がしたいです」。今までに一度も日本語の勉強をしたことがないそうだ。
 
 U-18では、保護者が一緒にやって来て、自分にも教えて欲しいというのはよくある。ヤッチャルとしては、可能な限り要望に応えているが、正直言って人手が足りない時は、ちょっと苦しい・・・
 
 ところで、お母さんは、どうして日本語を勉強したくなったのだろう?自営業を営むお父さん(仕事柄、達者な日本語をしゃべる)の手伝いで、とてもいそがしいのに・・・何より、なぜ『今』なのだろう?
 しっかり者のお姉ちゃんによると、「お父さんとわたしたちが日本語でしゃべっているから、お母さんさびしいみたい・・・」
 姉妹とお母さんは、日本に来て1年になる。中学生のお姉ちゃんは今でも母語をすんなり話すが、低学年ちゃんはかなり“意識して”話しているように見える。状況によっては日本語の方が楽そうだ(学習言語はまだまだ!!だけど)。流行の言い回しや悪態、Bad Wordでは、日本人顔負けのこともある。そのキャラクターから見ても、家族の会話が末っ子ペースになってしまうというのは想像に難くない。

 もちろんお母さんだって、これから日本で生きていくのだから、日本語を覚えれば自分の世界が広がる。その意味では日本語学習大いに歓迎だ。心から応援したい。けれど、家族の会話が日本語優位になってしまい、お母さんが淋しそうというのは、どうなのだろう。私はとてもひっかかってしまうのだが・・・この「ひっかかり」についてはまた近いうちに書いてみたい。(

2011年6月18日土曜日

東広島市は広い・・・

 今週は小学校高学年から中学生の年齢の子どもについて、相談を受けたり耳にしたりすることが多かった。そのうちの2人は母親が日本人男性と再婚したため、国から連れてこられた子どもたちだ。来日したばかりの子については、学校に行っても初めの数週間は学級担任の配慮だのみという状況である。サポートが少ない中で、来日直後の精神状態がなかなか安定せず、学校に通っていない子もいる。
 また、ある子は、日本で生まれ、小学校までは順調だったのだが、中学に入った途端に学校に行きたくないと言い出したとか。ちょっとした同級生の言葉がその子を傷つけているようだ。
 さらに、お母さん自身の悩みに付き合うこともあった。どうしたらこの厳しい現実を乗り越えられるのかと言う。
 このような子どもたちにどう寄り添ったらいいのだろうか。U-18は週に1回だけの活動だ。その上、広い市内に1つだけの教室なので、市の中心部から離れた地域で苦しんでいる親子にはなんの助けにもならない。先週から今週にかけて相談を受けた子どもたちのほとんどが、親の助けがないとサンスクエア(JR山陽線西条駅に近いU-18の拠点)には通えない距離のところに住んでいる。
 焼け石に水かもしれないが、ヤッチャルの活動が、外国につながる子どもたちの居場づくりになりつつある現状を見ていると、遅々としたものでも続けていかなければならないと強く思う。(

2011年6月10日金曜日

U-18の課題

 ヤッチャル活動開始から1年、子どもたちとつき合う中でいろいろな課題が見えてきました。ここらで一回、整理しておきたいと思います。目の前に立ちはだかる山はとても険しいですが、だからこそやりがいもあるのかなと思いつつ・・・

1:来日直後・学校への転入直後に必要なサポートをどうするか?
 学校に通いだしたばかりの時には、特に手厚いサポートが必要なのではないでしょうか。子どもたちを見ていると、もう少しきめ細かいサポートがあってもいいのでないかなと思います。教育委員会や学校とともに、サポートの方法や体制について、考えていけるといいのですが

2:全体に共通する日本語指導のノウハウの確立+個々のサポートの方法(様々なサポートのバリエーション)が大いに求められるところです。

3:子どもたちの思考力を伸ばすために何が必要か?
 子どもたちは母語も日本語もどちらも発達しきらずに日本に来てしまい、日本語の海の中をアップアップしながら必死で泳いでいます。ややもすると母語でも日本語でも思考ができない子になってしまいます。
 昨日ある中国人の中3男子に、中学の生活について作文を書いてもらいました。つたない中国語ですが、彼の苦衷がよくわかる作文でした。それを読んで、母語がしっかりしない限り思考力は付いていかないとつくづく思った次第です。自分の気持ちを書き表すことで、自分の頭の中を整理することができます。母語保持にもつながります。母語で作文を書かせることが、思考力を伸ばす事にならないだろうか・・・と思いました。何を書かせたらいいのか、どのようなアドバイスをしたら心のなかにあることが表せるのか、そんなことを知りたいと思います。
 ただし子どもたちの母語は多岐にわたっています。母語でそのような思考力をつけるようにサポートするとなると、子どもたちの母語を知っているボランティアが必要になります。それをどう確保するか、これは非常に大きな、そして難しい課題です。

4:『居場所』とは?
 子どもたちは学校では日本語で他の子とやりとりが出来るようにならない限り、居場所が不安定です。U18では少なくとも誰でも参加でき、居心地の悪さを感じさせない活動を心がけて行きましょう。私たちの活動を居場所づくりにつなげていきたいです。
 子どもたちを見ていると、1週間に一度ですが、お互いの存在がそれぞれの心の支えになりつつあるように見えます。これから先も日本で生きて行く彼らであれば、今後もお互いをサポートしあえる関係になったら心強いことでしょう。そのような仲間づくりをどう創りだしていけるかを考えたいと思います。

5:子どもたちの自尊意識を高めて行くには?
 日本に来て日本の学校に通う子どもたちは、教科学習を日本語で行うだけでなく、行動規範、生活習慣、友だち関係など、生活文化交友面でも 日本 にどっぷり浸かっていきます。時には自分たちの文化について、お友だちから心ないことを言われてしまうこともあるでしょう。自分の国を離れている子どもたち、もしかしたらこれからずっと日本で暮らしていく子どもたちであっても、自分たちの文化を大切にして欲しい。それができて初めて子どもたちは自分に自信が持てるのではないかと思います。
 U−18では、子どもたちが自分の国や文化を大切にしながら、日本とみんなの国を尊重する姿勢をもてるようにしていきたい。そのためにやるべきこと、できることは何かを考え実行していくことも大切な課題だと痛感しています。(

2011年6月1日水曜日

計算は何語で?

 昨日、10ヶ月ぶりにN君(小3)が、Uー18に参加した。大学生と一緒に算数の宿題をやっていくうちに、四則演算があやしいことがわかってきた。昨年の夏(にほんごこどもクラブ)は、時計の読み方で苦労していたっけ。あれからずっと日本の小学校へ通って日本語で勉強している訳なのだが・・・どうやら日本語、母語どちらの言語でも、計算がしっかりできないようだ。九九はどうにか暗記しているが、肝心の足し算が心もとない。
 高学年のA君も計算が苦手である。A君は、自分が使える(と言ってもそれぞれ問題があるのだが)3言語のどれでも、声に出して計算をやらない(できない)。本人は数字を見れば音がなくても計算できると言うのだが・・・
 私はこの年(?)になっても、計算する時は頭の中で九九を唱えている。繰り下がりの時は、「10の位から10借りてきて10ひく7は3,3たす2は5」という具合だ。九九の暗唱だけでなく、低学年でやる計算は、頭の中に音を伴ってたたきこまれている。音があるから暗算や見当付けがなんとかなると自分では思っている。しかしA君は割り算で見当をつける時も、すべて紙に書いて計算する(商に6がたつかな(筆算)あ、だめだ、じゃあ7かな(またまた筆算))。もちろん、音にしなくても、見れば、書けば計算はできる。ただしいちいち書いていたのでは時間がかかることおびただしい。
 母語と日本語、どちらの言語でもいいから計算をしっかり身につけておかないと、この先の算数、数学の勉強は茨の道になってしまうのではないだろうか。(