2011年10月3日月曜日

未来の家族

 10月1日に東広島市国際化推進協議会主催「多文化共生講演会」(シリーズ全8回)の1回目がありました.その会場で,とても考えさせられる出会いがありました.その方(Bさんとします)は日本人です.ご両親も日本人.外国で育ち.ご自分の母語(というか自分が一番しっくりくる言語)は育ったその国の言葉.日本語は,お話しする分には特に問題はありませんが,明らかにネイティブという感じはしない.こうなったのは,ご両親が「とにかくひとつの言語をきちんと身につけることが大切」と考えていたからだそうです.その国の学校に通い,その国の言葉で勉強して,その言語はしっかり身につきました.現在は日本で暮らし,家族の会話は日本語.子どもは日本の幼稚園に通っている.「子どもが小学校に入った時,学校の勉強を日本語で見てあげる自信が無い.どうしたらいいだろう?」と聞かれました.これはなかなか難しい問題です.ヤッチャルにできることがあれば,何でもお手伝いしますと伝えました.
 今,U-18に来ている子どもたちの中にも,このまま日本にいたら,日本語が自分の言語になる可能性が高い子(ISさん)がいます.ISさんが将来,自分の国に帰って子育てをすることになったら,どうなるのでしょうか.確かにひとつの言語(日本語)は,それなりに自分の中で確立するかもしれない.子育てするのに,自分が一番自信のある言語は日本語になるかもしれない.でも自分の国に帰り,そのまま定住となったら,子どもはその国の学校に通い,その国の言葉で勉強し,お友達と遊ぶことになるでしょう.その時,果たしてISさんは何語で子育てするのでしょうか?
 Bさんが育った国とISさんの母国は,実は同じ国です.全くの偶然なのですが,何か運命の皮肉(?)のようなものを感じてしまいます.つまりBさんとIHさんは,同じというか反対の環境に生きているわけです.多言語環境に育つ子は,何かひとつ言語を確立することが大切です(それが母語であれば理想的ですが).その際,その子自身,そしてその時点での家族(祖父母,両親,兄弟姉妹など)との関係を考慮します.しかし,どうやらもう一人(二人,三人・・・)忘れてはいけない人がいるようです.そう,それは未来の家族.Bさんとの出会いで,大切なことに触れることができたように思います.(