2011年11月30日水曜日

多国籍Uー18はみんなの居場所

 昨日(11/29)は定例活動日.11名の子どもが参加.出身国は中国,インドネシア,インド,ベトナム,シリア.とってもインターナショナルで,とってもにぎやかな2時間でした.11名のうち7名が中学生以上.最近のU-18 は活動開始当初より年齢層がぐっと上がっています.
 7名のうち3名は中国出身なので,お互いに母語が通じます.他の4人の母語はインドネシア語,ヒンディー語,ベトナム語,アラビア語.ということで話をするためには日本語が欠かせません.しかし来て間もない子もいるので,日本語だけでは埒があかない.そこで英語が出来る子は英語の助けを借りて,日英ごちゃ混ぜの何とも必死のコミュニケーションを繰り広げます.ところが,VT君(ベトナム)はいつかも書いたように(8/8)英語は大嫌い.普段は英語の問題を見ただけで拒否反応を起こします.そんな彼が,昨日は積極的に英語コミュニケーションに参戦してきました.
「先生,どこから来たのって英語でなんていうの?」
いや〜彼の口からこんな言葉が出てくるとは!!そして蚊の鳴くような声で
「Where are you from ?」
なんだ,やれば出来るじゃん!日頃中国トリオ(いつもはカルテットです.昨日は一人欠席.イケメン(?)揃いなので,4人そろうとジャニーズ系でデビューできるかも)が母語の世界に入ってしまうと取り残されることが多かったVT君.本当は淋しかったのかな.やっぱり友だちが欲しいんだね.


 大騒ぎしながら日本語,英語で拙いコミュニケーションを試みる子どもたちを見ていると,U-18があの子たちにとって『居場所』になってきているのかなと思う.学校で日本人の子と友だちになるのは容易ではない.学校に通ってない子もいる.自分を受け入れてくれて,自分をさらけ出すことの出来る場所と時間.そしていろいろな国から来た仲間たち.子どもたちがU-18をそんな風に思ってくれたら本当にうれしいな.もっといろいろなことおしゃべりしようね.もっともっとみんなの国のこと教えてね(

2011年11月20日日曜日

日本語スピーチコンテスト

 今日は東広島市外国人日本語スピーチコンテストがあった.発表者は全部で14人,中国,フィリピン,インドネシア,マレーシア,インド,韓国,多彩な顔ぶれだった.U-18からはAI君,KC君,ILさんが出場.さらに高校生も3人がチャレンジした.若手大活躍.たのもしい限りだ.
 AI君は緊張の面持ちで登壇した.原稿をしっかり暗記して,さらにそれを自分の言葉にしてみんなに語りかけている.いいぞその調子だ(彼の性格では上がっちゃって頭真っ白になっちゃうんじゃないかと心配してたんだけど・・・)
 
 2週間前,彼が「書いたよ」と初めて原稿を見せてくれた時,私はびっくりした.とても自然で,無理のない日本語だったからだ.そして何よりそこには,彼の素直な心,まっすぐな気持ちが溢れていた.私は読みながら目がウルウルしてくるのを感じていた.彼はしっかり自分で考えることが出来ている.国語のテストで良い点がとれなくても(本ブログ10/12参照)悲観することなんか無い.こっちの方が人間としてよほど大切だ.U-18メンバーの中で,ダブルリミテッドどころかマルチリミテッドの危険性が一番高い彼の中に,これほどの思考力,観察力,理解力が育っていたとは!!うれしい驚きだった.
 今日は日曜なのに,担任や日本語の先生(学校)が,彼のスピーチを聞きに来てくれた.何人かの同級生,姉妹,同国人の仲間もいる.さながらAI応援団だ.
 担任はそわそわしている.金曜日にクラスのみんなの前でリハーサルした時,彼は途中でど忘れして言葉が出なくなってしまったそうだ.先生は「まあヤツらしいけどな」と言いながらも気が気でないらしい.クラスメートは「彼はけっこう人気者だよ」と言いながら,彼の姉妹たちとじゃれ合っている.AI君は本当に良い人たちに囲まれている(もちろん彼の人間性がみんなを引きつけているのだが).こうした人間世界を持っているから,日本語や母語が不十分でも,彼の中にあの思考力や豊かな感情が育ったのだろう.
 そして,今日気づいたことがある.担任,クラスメートともに,彼や彼の姉妹たちを外国人(特別)という目で見てはいないようだった.一人の(大切な)生徒,一人の(大切な)友だちとして自然に接している.そう,子どもが好きで,子どものことを真剣に考えて向き合ってくれる人は,外国人とか日本人とかいう目で子どもを見ない.『その子』にとってどうしたら一番良いかを考える.担任の先生の自然な雰囲気は,とかく子どもの『外国人』の部分に目が行きがちな私に大事なことを気づかせてくれた.


 ところでAI君のスピーチだが,かっこいい部分はちょっと短かった.そこから彼は.持ち前のサービス精神で,自分のプライベートを語り始めた.完全にアドリブである.好きなテレビ番組は〜〜です.彼女が出来たんだけど振られました・・・あ〜あこれでは優勝は無理だなあ.ま,こんなだからこそ,彼はみんなに愛されているんだけど(

2011年11月16日水曜日

どしたん?

 昨日(15日),久しぶりに大人の日本語教室に行った.学習者とペアでおしゃべりしながら日本語を学ぶスタイルだ.今日のパートナーは日系ブラジル人のMさん.勉強を始めてまだ数ヶ月.『日本語これだけ』(テキスト)を使って「元気ですか?」「いそがしいです」「ねむいです」などを練習した.


 身体の調子を聞くフレーズをいくつか学ぶ中で,私は何気なく「どうしたの?」「どうしましたか?」と聞いてみた.超基本フレーズだし,職場でもしょっちゅう聞いているに違いない.このくらいならわかるだろう.しかしMさんは首をかしげている.「疲れましたか?」「ねむいですか?」「頭が痛いですか?」など,ジェスチャー混じりで具体的に聞けば理解できるのに,こういうつかみ所のないフレーズは案外難しいようだ.何かいい手はないものか・・・はたとひらめいて苦し紛れで言ってみた.
「どしたん?」
広島弁ネイテイブでない私でもこれなら言える(イントネーションに自信はないが).Mさんが,ああ!という顔になった.これならわかると言う.会社でいつもそう言われるのだそうだ.なるほど,Mさんの周りにあるのは,生きた“広島の”日本語なのだ.こりゃ,テキストには書いてないわ.


 じゃけん,どしたん? 来ちゃったですか,いけんのんよ〜,いたしい,いらう,えっと,みてる,はぶてる,たいぎい・・・Mさんの周りには,テキストに書いてない言葉がいっぱいあるにちがいない.Mさんが次にどんな言葉をキャッチしてくるか,なんだか楽しみになってきた(