2011年12月6日火曜日

帰国する子,一時帰国する親

 彼は母国へ帰った.昨年はよくU-18に来ていたが,中学生になってからはとんとご無沙汰だった.このところとても不安定で問題行動が多かったと聞いてはいたが・・・6年生半ばで来日してからの1年半は彼にとって何だったんだろう.親は目的を持って日本に来たはずだ.それなのにアルバイトに明け暮れていた.家族を呼び寄せた以上,生活していかなければならないのはわかる.遠く離れて暮らすことが家族にとって良いとも思わない.親も苦しかったに違いない.それでも怒りはこみ上げてくる.いったい何を考えているのだ.振り回され,苦闘し,心のバランスを崩した彼が哀れだ.
 帰りたいのに帰れない子もたくさんいる.今日,頭が痛くて学校を早退したのに,貸しビデオ屋に入り浸っていた彼もその一人だ.夕方浮かない顔でやって来た.今週から親が年少の兄弟を連れて母国へ里帰りするそうだ.「ぼくも帰りたいなあ」普段はシャイで本音を見せない彼がつぶやいた.そうだろうね.「いっぱいおいしいもの買ってきてもらいなさい」私の返事は彼には虚しく響いたことだろう.
 それぞれの家庭にそれぞれの事情がある.でも自分が国を出て日本へ来るということが,我が子にとってどういう意味を持つか,我が子にどういう苦労を背負わせることになるか,それだけは真剣に考えて欲しい.振り回されて大変な思いをするのは子どもたちなのだから.