2012年8月30日木曜日

みんなと同じに学びたいんよ!!


「私はニュースで「いじめ」の事件を見た。私は自殺をした生徒がかわいそうだと思い、いじめの問題に対して腹立たしく思った。それからテレビでいじめのニュースをたくさん見て、日本の学校ではいじめが多いと思った」
U-18の夏休み活動に参加した中学生MCさん。来日半年の彼女の日本語力で、テレビのニュースを理解するのは大変だ。それでも、このニュースは、(悲しいことだが本当に)人ごとではなかったようだ。彼女は夏休みの課題『人権作文』にこのテーマを選んだ(それにしても毎年思う。宿題ってホントに『平等』に課されるよね。ふう〜〜〜〜)。
「私も学校で〜〜人だと笑われたり、からかわれたりすることがある。でも何も言わずに我慢している。どうしていじめられるか考えてみた。日本語があまり上手ではなく、勉強もできないからということだ。だからがんばって勉強してたらいじめがなくなると思う。テストの点数が他の人よりも高くなったら皆私のことを認めてくれると思う。そして日本語が上手になったら、相手との会話がたくさんでき、また楽しく話すこともできる」
う〜ん「テストの点数が高くなったら・・・」彼女にこう考えさせてしまうという現実は重い。まあ人間関係についてはまだまだ手探り状態なのだろう。クラスメートには『違う』ことへの戸惑いもありそうだ。戸惑いを笑いやからかい以外の方法で表現できたらいいんだけど・・・でも、それを乗り越えたところに、友情は芽生えると信じよう。

ところでMCさんにとっては完全にオーバーキャパのこの宿題、本人も周りの人間も「今の日本語力ではとうてい無理!!」と思っても仕方がない。しかし、MCさんは完成することができた。なぜか?
MCさんは「宿題はやらなくてはならない、(みんなと同じに?)やりたい」と強く思っていた(作文の中にもそう書いてある)。夏休み中、やっかいな社会の宿題にも一生懸命取り組んだ。外国の学校では、よくこう言われることがある。
「言葉がわからないんだから、やらなくていいよ」
この言葉、一見親切に感じられる。しかし、この一言は子どもの学ぶ機会を奪ってしまう。MCさんはきっと無意識のうちに「奪われてなるもんか!」と感じたのだろう。心の中で「私だって母語でなら、友達と同じように考え、意見を持つことができるよ。私の力を日本語レベルで見ないで!!」と叫んでいたに違いない。子ども自身がそう思えるのなら、言語力が圧倒的に足りなくても、周りがその気持ちに応えてあげてほしい。それでこそ、子どもの学ぶ機会(権利)は守られる。

U18の頼れる大学生ボランテイアYFさんは、粘り強くこの課題をサポートしてくれた。二人で語り合いながら、少しずつ作文を進めていった。決して「あなたの日本語力では無理よ!」とは言わなかった。
言葉の力が不十分な子と一緒に勉強するとき、語り合いながら(つまり双方向のコミュニケーションをとりながら)勉強するのは最も有効な方法だ。拙い表現でもじっくり聞いてもらえると、子どもは自分から表現しようとする。YFさんがあの笑顔(とてもチャーミング)で聞いてくれると、どの子も安心して話し始める。

学校ではみんなと一緒に新しいことを学ぶ。それが「教師の言うことを聞いて書く」という一方通行の勉強になりがちなのは、(特に中学以上では)ある意味仕方がない。外国につながる子どもたちに何より必要なのは、そのようにして学んだこと(全くあやふやな状態)を定着させる場だ。東広島では、多くの親に日本語力を期待するのは無理な注文だ。家庭学習が望み薄となれば、語り合いながら勉強を進められるのは、U18のようなNPOしかない。学校、家庭、NPO、それぞれがしっかり連携を取り合えば、子どもたちはもっと効率よく(?)勉強できると思うのだが・・・

外国につながる子どもたちにとって、年齢相応の課題を自分で考えるという経験は大切だ。新しい言語のレベルと学習レベルを同じにしてしまったら、その子の思考力を伸ばす機会は失われる。母語、大人の援助・・・使えるものは何でも使って年齢相応の課題にチャレンジしていきたい。ただしそうできるのは、MCさんのようにやる気がある子だけだ。やる気を生み出す源は、実は母国にいるときに身につけた基礎学力、学習習慣である。この夏、私たちヤッチャルはある研究をする中で、このことを痛感した(次回はそれについて語ってみたい)。それにしても、私たちNPOがサポートできないこの部分の重要性・・・親の責任は本当に重いのだ!親たちは本当にこのことを理解した上で、わが子を日本に連れてきたのだろうか?()*作文掲載はMCさんの許可を得ています。

ヤッチャル2012夏の証し(?)(次回のお楽しみ)

発表が終わってほっと一息

2012年8月21日火曜日

森は水のふるさと

前回の書き込みからずいぶんのご無沙汰になってしまいました。U-18はこの夏も楽しく活動しています。まずは月、木、金の午前中、宿題や日本語のお勉強。さらに読み聞かせ、バイオリン体験など、子どもたちは興味津々で取り組んでいます。

そして8月17日は広島市水道局の教育プログラム『太田川源流の森』に行ってきました。「森は水のふるさと」という言葉を心から実感した充実の一日となりました。さわやかな風が吹き抜ける緑の森の風景をお楽しみください(内容は次回にあらめて・・・)。
広島市水道局のみなさま、本当にありがとうございました(
水をたくさん貯えておけるのはどっちの土かな?