2012年12月17日月曜日

母語(継承語)を学ぶ子どもたち

 2012/12/15(土)に広島市に行き、中国にルーツを持つ子どもたちが中国語を学ぶ教室を見学してきました。平日は市立小学校に通い、土曜日は母語学習クラスというのは、日本人の子の海外現地校+補習校のスタイルと似ていますね。

 広島市の中心部にある古びたビルの2階。急な階段を上っていくと、そこに『学思』がありましたhttp://gakusi-web.com中国語、英語、美術を教える民間スクールで、それぞれ子ども、大人向けのクラスが複数あります。私たちが見学したのは、中国人の子ども向けクラス。家庭で中国語を使う子どもたちですから、母語(継承語)としての中国語ということになります。小学生対象で、その日の出席者は4〜5年生6人(他に6才未満対象クラスあり)全員違う小学校に通っていますが、ここでは仲良く勉強していました。子どもたちの中国語レベルは同程度にしているとのこと。教材は中国の小学校1年生用の教科書で、この日は「二頭の子どもライオン」の前半部分。二頭のうち一頭はまじめで勤勉、もう一頭は怠け者という、後半部分が容易に想像できそうな教訓的(?)物語です。普段は日本語禁止ですが、中国語のわからない見学者()に配慮してくださり、この日は先生も子どもも日本語を交えて授業が進みました。子どもたちは「本当?日本語使っていいの?」その顔はなんとなくにこにこしているように見えます。どうやら日本語の方が楽な様子。全員日本の学校に通っていて、うち5人が日本生まれですから、まあ当然と言えば当然でしょう。
 子どもたちの翻訳に出てきためぼしい言葉を拾ってみると、たてがみ、独身、ストレス、修業、食いちぎる、なわばり、さらには『おかま』ライオン・・・ニート、肉食系、生活スキルのような最新(?)の言葉もありました。小学校高学年として、日常生活や友達との会話で、日本語に困ることはなさそうです(もちろん個人差はあります)。学習用語はサバンナ、サハラくらいしか出ませんでしたが、これは元が1年生の教科書ということがあるのでしょう。子どもたちが日本の学校でどのように教科学習をしているのか、是非知りたいところです。

 先生によれば、一部の親は中国語だけでなく教育全般に、とても高い意識を持っているそうです。そもそも学思に通わせて中国語を学ばせること自体、その表れと言えるでしょう。外国人の親は「母語(継承語)はわざわざお金を出してまで習うものではない。家で使っていれば十分(保持可能)」と思っていることが多いですから。
 ここでは熱心な家庭は、親子の会話や基本的な読み書き(保持レベル)にとどまらず、子どもの将来を見据えて中国語を学ばせたいようです(それでも中国語を年齢相応レベルに持って行くのは容易なことではなさそうです・・・)。同時に日本語(教科学習)の方では、塾通いをしての中学受験、さらに難関大学への進学もめざし、実現している家庭もあるそうです。これらは親に経済力とエネルギーがあればこそ可能なことであり(学力や日本語力があればさらに有利)、すべての移住家庭にできることではないでしょう。
 以前友人から何度も「中国の親たちは教育熱心!」と聞かされました。しかし東広島では、生活に手一杯で子どもの教育まで頭が回らない親、母語が弱くなり親子の会話が難しくなっている家庭も多く、友人の言葉にあまり現実味を感じていませんでした。しかし今回の見学は『友人の言葉』そのものでした。その落差の大きさ! なんだかとても考えさせられる見学となりました()。