2014年4月19日土曜日

生活の楽しみを見つけよう!

 東広島市では,多彩な大人向け日本語教室を開催している.その中に,(未熟ながら)が世話役をしている教室がある.以前も書いたように,この教室は東広島市の中心地西条ではなく,海岸の安芸津という所で行っている.学習者の半分は名産の牡蛎産業に携わる技能実習生である.一年目はも学習者もボランティアも手探り状態であったが,学習中思わず本音がでたり,外国人実習生を受け入れる側の悩みやとまどいの聞き役(相談役)になったりしながら,試行錯誤で日本語を学んでいった.

 実は昨年度,は技能実習生たちの生活のはばが狭いということを感じていた.安芸津は交通の便がよくないので,車を持たない実習生たちは出かける機会に恵まれていない.仕事以外は日々の買い物くらいで,あとは部屋でごそごそしている事が多いと思われる.レクリエーションの機会は,ほとんど無いのではないか?そんな彼らを西条の酒蔵見学につれだした時は楽しそうではあったが,その後に行った大規模スーパーでは,買い物,食事など,まだまだ生活に自信がないことを露呈してしまった.
 
 幸いなことに新年度も,教室を無事開講することができた.4月11日(金),昨年度の学習者,ボランティアほぼ全員,さらに新しい学習者も加わって,教室は新たなスタートをきった.世話役として本当にうれしい限りである.この日は,改めて自己紹介をした.その中で,「趣味は?」という質問に,みんなが料理,スポーツ,『小説』を読むなど,今まで触れてこなかった答えを言うのにビックリした.おそらく,みんな慣れてきて,自分の事を伝えたいと思ったようだ.とりわけ牡蛎のS君,R君は,一生懸命スポーツという言葉を探しだし,さらには『羽毛球』(バドミントン)が好き!とまで伝えてくれた.


 今年の安芸津日本語教室は,東広島市安芸津B&G海洋センターに場所を移した.ここは,プール,体育館など総合運動施設である.だれでも安価で運動を楽しむことができる.この環境を利用しない手はない.ということで,手始めに18日の教室では,施設見学を行い,利用申請書を書く練習をした.運動したくても公共施設を借りる『手続き』は,日本語が不十分な学習者にとっては高い壁になる.

 この見学で,牡蛎のR君は「料金が安いのにびっくりした」と語った.中国では倍くらいの値段になるという.ということは中国庶民の給料から考えたら,かなり割高だ!!
「日本は物価が高いと思っていたけど,初めて中国より安い物にであった」

 そして,うれしいことに施設の職員の方からは「利用案内,多言語版が必要ですよね?」という言葉を聞くことができた.日本語教室の活動が,多くの人(外国人に限らず)が地域社会の中で快適に生活することにつながるなら,こんなうれしいことはない.

 今度は,日本語教室主催で,バドミントン@安芸津B&G海洋センターをやりたいなと思っている.机にむかうだけでなく,身体を動かして,いい汗かきながらやりとりするのは,正真正銘の生きた日本語になるはずだ!!


温水プールを見学(あったかいね)

倉庫にはバドミントンのポールもあるよ

2014年4月9日水曜日

新年度がスタートしました

 日本では3月から4月が年度の切り替えだ.東京より1週間くらい遅い(?)東広島の桜も盛りを過ぎつつある中,昨日(4月8日)は各高校で入学式だった学式後,サンスクエアに立ち寄ってくれたのがJ君(来日半年で定時制高校に合格).見違えるようなスーツにネクタイ姿,何ともまぶしい!!
サンスクエアのお隣さんの桜.満開は過ぎた?かな

 さてちょっと遅くなってしまったが,事件(?)が頻発したU18っ子たちの高校入試,とにかく一区切りということで振り返ってみよう.
 結局,U18に係わりのあった子(つきあいの濃淡は子どもによってさまざまだが)で高校受験にトライしたのは11人.このうち高校進学を果たしたのは9人(全日制公立3人,私立1人.定時制5人),叶わなかったのが2人.
 全日制公立合格者の日本での生活歴は,幼児から,小4から,小6からで,それなりの日本語力と学力を兼ね備えていたと言える.一方定時制では,来日半年で合格した子もいるU18っ子が受験する定時制高校は,受験生の半数近くが不合格になる厳しさ(?)で知られている(定員割れでも!!!).不十分な日本語力でも合格した子には,何らかのアピールポイントがあったということだろう.高校進学が叶った子は,大いに勉強し,学校生活を楽しんで欲しいと,ヤッチャル一同心から願っている.
 
 一方,今回,志望をかなえられなかった2人(本当のところ,気持ちの整理はまだついていないだろう),そして実はこのふたりに加えて,U18っ子の中には受験すらしていない子も複数いる.来日のタイミングが悪く,日本でも母国でも中学をドロップアウトしてしまい(卒業資格無し=受験不可),それがゆえもあって高校へ行く気がない子たちだ.みんな17〜19才である.

 98.1%(平成21年度文科省調べ)という日本の高校進学率(定時制,通信制を含む)を見れば,日本の社会では『高卒』を前提にもの事が進んでいくと思った方がいい.例えば専門学校.「外国につながる子」は大学より就職,つまり「手に職」を考えて専門学校を希望することが多い.その多くは「高卒」が受験要件になっている.

 17〜19才で高校へも行かず,そういう子はなにをやっているんだろうといぶかる方もいるのではないだろうか.ご心配なく.この子たちは,ただ遊んでいたり,家に籠もっているわけではない.みんなアルバイトやパートで働いている.東広島には,いや,今や全国に,日本語がほとんでできなくても働ける企業がたくさんあるのだ!!だからみんな,お金はそれなりに持っている.最近,運転免許をとって軽自動車を乗り回すやつまで現れた.「高校なんて行かなくても,俺たちは自立(自活)してるぜ!!」とでも言いたげな感じだ.『生きる』という意味では,なんともたくましい!!
 でも,それは若いからこそできることで,しばらくしたら,ふと自分をふりかえる瞬間が訪れるのではないだろうか?(よけいなお世話だと言われそうだね
 

 高校に行けない子どもたち.これからどうするのだろうか.もちろん中卒認定試験があるから,ドロップアウト組でも高校への道がないわけではない.しかし親にふりまわされ,母語においても学力に問題のある子にとっては,『すべてを日本語で』という試験は,とてもつもなく高いハードルだ.
 
 最近,政府レベルで「外国人を日本へよぶ」のが大きな流れになっている.それはそれで結構なことだ.ただし,一時的に労働力が確保できたとしても,その裏にはこんな現実があることを.政策決定をする人たちは本当にわかっているのだろうか?
 
 ヤッチャルのような市民団体は,そんな子どもたちを,可能な限りのサポートをしながら,静かに見守っていくしかない・・・(