2014年11月18日火曜日

コンテストは『テスト』じゃない

 11月16日(日),毎年恒例の東広島市外国人スピーチコンテストが行われました.



  今年は13名がエントリーし,うち4名がU18の子どもたちでした.広島大学の留学生が大半の中,小5,中2,中3,高3が日頃鍛えた(??)日本語で精一杯の自己表現を行いました.4人とも子どもらしく(年齢相応に)ピュアな視点から,聞いている人の心にぐっと訴えかけてくるスピーチができました.
 
 小5のISさんのテーマは3年間続けているスポ少でのバレーボール.監督に怒られたときは,兄(やはりバレーボールをしている)のアドバイスにはっとして,自分を見つめ直し反省したそうです.最後には「自分がバレーボールに熱中できるのは周囲の方々の支えのおかげです,ありがとう」と締めくくりました.
 中2のIG君,中3のIAさん,高3のVT君(毎度おなじみですね!)はいずれも日本に来てから今日までのことを振り返りました.期せずして3人に共通していたのは,初めて学校へ行った日のことについて触れたことです.異口同音に,
「日本語が全くわからず心細くて逃げ出したくなった.それでも母国に帰ることはできないんだ.友達が欲しかったら日本語を覚えなくちゃダメなんだ.1人で家にいるより学校の方がいい.だから苦しくても学校へ行くよ!!」
みなさん,子どもたちの正直な声に心から耳を傾けてくださいね.子どもたちは自分の意志で日本へ来たのではない!!その心の叫びを大人は肝に銘じるべきだと思います.

 そして結果発表では,IG君は「東広島市政40周年記念特別賞」,IAさんは「がんばった賞」に輝きました.大人たちに混じって大健闘です.本当におめでとう!!いい思い出になったね.VT君は明らかに準備不足でした.でも彼は2週間ほど前,見事に高校卒業後の進学をきめました!!日本に来たときからエンジニアになりたいと言っていた彼にとって,今の日本語レベルで可能な最良の進路(公立の技術系大学校)です. 

 ところでこのスピーチコンテストの審査委員長は,ここ数年,日本語教育の専門家M教授(広島大学)がつとめています.毎年コンテストの最後に彼の全体総括があるのですが,今年の講評は例年(いつもとてもすてきです!!)にもまして,その場に居合わせたすべての人たちの心に強く残るものでした.

「スピーチコンテストはテストではありません.前に『コン(com,kom)』ということばがついています.これは『ともに,一緒に』ということを意味します.今日は東広島市に住む外国人のみなさんと日本人がともに過ごし,何かを分かち合いました・・・」

 本当にその通りです.子どもたちは本当に良く努力しました.まだまだ未熟な日本語でとにかく5分以上話せる長さの原稿を書き,一生懸命覚えました.でも,子どもたちだけでは,ここまで来ることはできません.ヤッチャルメンバーだけでなく,サンスクエアに集う多くのボランティアが,子どもたちの原稿チェックや練習につきあってくれました.おかげで子どもたちは大きく成長し,私たち大人もいろいろなことを学ぶことができました.子どもたちとつきあってきた日々を鮮明に思い出し,思わず涙ぐんでしまうこともありました(ほんとうに,みんな苦労したね!!).本当にみんなで “ともに” 過ごしてきたんだなあ・・・

 中2のIG君,中3のIAさんは来年3月に帰国します.今回のスピーチは,2人にとっては日本生活の総決算です.改めて『日本での自分』を見つめ直す貴重な時間になったことでしょう.2人(+小学生の弟君)が帰っちゃったらさびしくなるなあ・・・
 
市政40周年記念特別賞の表彰へ向かうIG君