2015年5月21日木曜日

人の心がわかるヤツ

  最近のU18はとてもにぎやかだ.特に中国勢の台頭(??)が著しい.今週の火曜日(5/19)は,中国にルーツを持つ中学生以上が7人いた(内訳は定時制高校生=1,中卒年齢=1,中3=2,中2=1,中1=2,もう1人加わるという情報あり).滞日期間は来日半年が一番長く(高校生を除く),先週来たばかりという子もいる.中国での学習状況も,朝から晩まで勉強する全寮制の学校出身者から,小学校の算数がおぼつかない子まで,本当に様々だ.

 U18では,なるべく子どもの実態にあわせて勉強しているが,ボランティアの数は限られている.仕方なく,学習の定着度や理解力の違う子がいっしょに学習することもある(日本語レベルは同じくらいなので).しかし,そこに問題が発生する.一番深刻なのは,仲間と自分を比べてしまい「自分だけがうまくできない」と劣等感(?)が芽生えてしまうことだ.学校で何もできなくて悔しい思いをしているのに,U18でも落ち込んでしまったら,子どもの行き場はなくなってしまう.本当に申し訳ない.火曜日はSさんがそうなってしまった.しかし,そこに頼もしい助っ人が現れた・・・それはR君

 5年前,小学校6年で来日したR君(現在高2:全日制).U18開設当初の活動に参加した.当時の彼は,学力はあったが日本語はもちろん分からない.家庭的にも不安定で,その後帰国,再来日もあった.そんな状況のせいか,中学以降はかなり“荒れ”ていたようだ.学校をサボっている,物を壊した,けんかしたなどの情報が断片的に飛び込んでくる.家が遠いせいもあって,中学以降ほとんどU18に来なかったので,ヤッチャルとしては「どうなってるんだろう」と一方的に心配するだけだった.
 
 全日制に通うI君(合格の顛末はこちらから)から,入学後半年ほどして「あいつ(R君),同じ学校だよ」と聞かされた.その時はうれしかったのだが,「あいつ,まだ日本にいたんだ!いつの間にそんな実力がついたんだ!」と驚きの方が先に立った.

 そんな彼が,男友達のおとも(?)で,時々U18に顔を出すようになった.5/19の活動では,はじめ友達の日本語学習を手伝っていた.隣ではSさんとUさんがボランティアと一緒に日本語を勉強していた.実はUさんは日本に来たばかりである.基礎学力が高く,「勉強」が身についている子だ.来日前に少し日本語を勉強してきたこともあり,理解のスピードがものすごく速い.そのスピードにSさんはついていけなかった.みるみる顔が曇ってきて,ただでさえ口数が少ないのに何も言わなくなってしまった・・・

 そこに登場したのが,隣にいたR君だ.自然な感じでSさんのサポートに入り,色々話しかけてくれた.R君としては,過去の自分と同じ状況の仲間を見過ごすことはできなかったのだろう.来日当初,彼のまわりには中国ルーツの子がたくさんいた.ただし日本生まれ日本育ちが多く,日本語ゼロはR君だけだった.仲間がいて中国語でのサポートは得られる.確かに心強い.しかし彼は孤独感,劣等感に苛まれていたのではないだろうか.外国人が自分1人なら,比べる相手がいない.まわりに“仲間”がいると,むしろやっかいなことがある.

 彼は人の心が分かる青年に成長していた.本当はしなくてもいい苦労だが,そこからすばらしい人間性が育った(苦労が無駄にならないで良かった!).そんな彼が
「先生,おれのこと覚えている?」
は中国語ができないから,あの頃彼に関わったのはほとんどだった.それでもR君は,こう聞いてきた.彼の心の中にはU18がしっかり刻まれているのかな!!!

大崎下島にて.道ばたで売っている夏みかんがうんまい!!