2016年12月27日火曜日

2016年雑感

 このところブログはすっかりご無沙汰でした.ご無沙汰中もヤッチャル,にほんごひろばU18は,いろいろ活動していました.単にが筆無精だったから・・・

 そこで今回は,2016年は何があったかなあ〜〜と考えてみました.

1.なんといってもVT君の就職決定→お祝い飲み会でしょうか.
 初めて会ったのは2011年3月末.地震直後で,日本中が不安いっぱいだった頃です.日本語が全くわからないので,彼の得意な数学を頼りに,一歩一歩勉強しました.のんびりしているように見えるけど,コツコツ努力をつづけたVT君.定時制高校→専門学校→就職.機械という,もともと自分のやりたかった道に進むことになりました.U18メンバーだけでなく,全国の外国につながる子どもたちのロールモデルになれるでしょう.

2.にじいろキャンプ
 毎週土曜日に,10人くらいの子どもたちが集まって準備会をしました.ほとんどが中国系の子どもたちだったので,話し合いは中国語でした.水を得た魚,口角泡を飛ばす,侃々諤々,子どもたちの生き生きとした表情が印象的でした.思いっきり言いたいことを言うというのが,どんなに『健康』に良いことか・・・その後も,土曜日の活動は大賑わいが続いています.

3.修学旅行をしました
 3月には,ヤッチャル始まって以来のボランティア修学旅行ができました.島根県で行われた研修会への参加+グルメツアー+カラオケです.多少の幅はありますが,ほぼ同世代のボランティア軍団,カラオケの趣味が合うことがなんと心地よいことか!!AKBとかよくわかんないからねえ・・・(~_~;)

4.通訳派遣に協力しました
 東広島市では,外国につながる子どもたちが市立小中学校に入るとき,初期のサポートがありませんでした.これまで,日本語指導教員が派遣されるのに,だいたい1ヶ月かかっていました.子どもたちにとって,最も不安な1ヶ月が,非常に手薄な状態になっていました.2016年4月から,ヤッチャルと市役所が協力して,要請に応じての通訳派遣をはじめました.これまで転入時,懇談などで,アラビア語,フィリピン語,英語,中国語などの通訳が活躍しています.子どもたちの安心した顔を見て,学校の先生も安心するようです.

5.参加者の大幅増加
 これはうれしいです.2016年4月から12月までの延べ人数で,子どもは750人に迫る勢いです(すでに2015年の1年間を上回っています)\(◎o◎)/!ボランティアも増えていますが,子どもの伸びにはついていってません.ボランティア不足は,今後のヤッチャルの大きな課題です.

ということで,2016年の活動は滞りなく終了しました.2017年は,新たな試みができるかどうか・・・目下,考え中です!!

みなさま,どうぞよいお年をおむかえ下さい.来年もよろしくお願いいたします.

ヤッチャルの本拠地,広島県東広島市
西条は酒造りが盛んです,酒蔵の煙突が何本見えますか?



2016年10月24日月曜日

こどもたちはよく働いた!!

こどもたちは,本当に無限の可能性を秘めているね(*⌒▽⌒*)
それを活かせる場があれば,あんなにも能力を発揮して輝くことができる!!お膳立ては大人の責任だな・・・

10月23日は毎年恒例のインターナショナルバザーでした.第1回が2012年だから,ことしは5回目です.大人の気分がちょっとだけマンネリ化したのか,思うようにボランティアが集まらず,ピーーンチ(~_~;)に陥ったのがです.そこで,こまったときの〜〜頼みではないですが,U18のこどもたちに『集まれ〜〜!!』

まずは前日(10月22日)の準備です.集まった品物をはこんで,並べて,だいたいの値段を決める.Jくん(高2),Uさん(中2),Fさん(中2)だけでなく,小学生のFちゃん,Aちゃんも,いっしょうけんめい手伝ってくれました.間に合わないかなと心配した準備が前日のうちに終了!!
準備完了!!FさんとKさん

そして当日です.ヘルパーはさらに増えて,Kさん(高1),Uさん(高1),Sちゃん(小6)が加わりました.

12:00の開場まえに,ドアの前に列ができました.そして,はじまりました.まずはUちゃんがドアの前で「いらっしゃいませ,いらっしゃいませ,ゆっくりはいってくださいねえ」と声をはりあげました.

この日,こどもたちは売り子をしました.お客さんからお金をうけとり,必要ならおつりを渡します.おつりの計算も素早くやらなくてはなりません.日頃,算数が苦手な子も,今日ばかりはそんなこと言ってられません.子どもたちを鍛えるのは実践が何より!!こどもたちは,だんだん自信をもって,お客さんと応対するようになっていきました.

特に,食器を売るてつだいをした6年生のSちゃんはすばらしかった.お客さんがものを選ぶと,さっと受け取って新聞紙でつつむ,手提げ袋に入れて,お金をもらい,おつりをわたし,さあどうぞ!!笑顔で,日本語を使って応対しています.その気配りと手先の器用さには,本当にびっくりしました.『気配り娘』の称号を進呈したいとおもいます.将来,接客業をしたら,すばらしい人材になるでしょう.
食器をつつむSちゃん.とても丁寧です
インターナショナルバザーは無事終わりました.多くの人がきて,多くの交流がうまれました.バザーでものを売って資金稼ぎをすることも大事ですが,交流の場を提供できたことがいちばんの収穫です.

そして,子どもたちが生き生きと輝いていたこと!!これが何よりの喜びでした(
たくさんの人で賑わいました.みなさんありがとう



2016年9月12日月曜日

こんな美味しいお酒あるだろうか・・・(^_^)

この子たちと一緒にお酒をのむ日が来ようとは・・・感慨無量!!

にほんごひろばU18がはじまったのが2010年.これまでに何人の外国につながる子どもたちと接してきただろう.おそらく200人近くになる.どの子も日本語に苦労し,学習に苦労し,そして生活に苦労する.自分の言葉でだったら難なくできることも,日本語『で』となると簡単にはいかない.高校へ進学できたとしても,本来の実力からすれば,子どもたち自身は不本意と感じることも多いだろう.

そんな子どもたちの中で,U18第1世代とも言うべきVT君.このブログに何度も登場したおなじみだ.中3で来日,定時制高校,公立の大学校,そしてこの夏にめでたく就職が内定した.こう書くとすんなり歩んだように見えるが,決してそんなことはない.これを日本語ゼロからやることが,どんなに大変なことか・・・

そのVT君,そして同じく第1世代のSIさん(定時制高校在学中)がことし20才になった.よし行こう!!

君たちと一緒にお酒が飲めるなんて!!
いままでに味わったことのない格別の味だったよ!!

君たちとの出会いは,ヤッチャルメンバーの人生を豊かにしてくれている.本当に出会いに感謝!!これからは,おたがいに一人の大人として,人間としておつきあいよろしくお願いします.

そして,後輩たちに刺激を与えてくださいね!!
今夜は焼肉じゃあ〜〜〜!!

何を飲もうかなビール,ワイン,ハイボール??なんでもどうぞ〜〜


2016年8月22日月曜日

にじいろキャンプ2016

第3回にじいろキャンプ(2016)を行いました.

 8月19、20日の二日間,呉,福山,安芸高田,東広島から30人の仲間が集まりました.
今年のテーマは『自分たちでつくるキャンプ』です.主催する東広島のこどもたちは,春から10回以上の準備会を開いてきました.キャンプで何をしたいか,どうしたらみんなが仲良くなれるか,真剣に考えました.日本語が不十分な子どもたちは,学校ではこういう話し合いがなかなかできません.みんなの真剣な様子に,ヤッチャルスタッフは毎回圧倒されていました.

 スケジュールは
1日目:カヌー体験.水の安全教室,西条の盆踊り参加
2日目:バスケットボール,消しゴム作り
合間には、必ず振り返りの時間をとり,みんなでいろいろなことを話しました.

貴重な体験となったのが,カヌー&水の安全教室です.黒瀬B&Gのスタッフの指導のもと,池の生ぬるい水のなかで,みんな大はしゃぎしながら,真剣にとりくみました.カヌーでは転覆したメンバーが2名いました.そのひとりJ君(中国)は最後の振り返りで
「いちばん印象に残ったのは,カヌーで沈(ちん)したことです(「転覆する」のカヌー用語).びっくりしました.息が苦しくて本当に大変でした」と書いています.

 盆踊りでは,人混みの中で,メンバーの1人が落とし物をしてしまいました.うろたえるD君に対して,みんなが協力してさがしてくれました.楽しい時間を友だちのために使ってくれる.本当に心の優しい子どもたちです.子どもたちがいっしょうけんめい探していたことで,他の人たちが落とし物のことを知ることになりました.そして,集合しているわたしたちのところに,1人の男性が落とし物を拾って届けてくれました.ほんとうにたすかりました.

 バスケットボールは,何時間も話し合いをして決めた種目です.経験の差があり,うまくゲームが進められなかった面はありました.その中で,いちばんの経験者R君が,2試合,3試合と進んでいくうちに,声を出してみんなに指示するようになりました.技術のない子でも楽しめるように,協力してボールをゴールに進めていけるように,彼なりに考えて行動してくれました.日頃寡黙なR君の別の一面がでて,とても良かったなと思いました.

 キャンプに参加したのは,全員,親の都合で(自分の意志と関係無しに)日本に来た子どもたちです.日本がわからない,友だちとうまく話せない,文化が違う,それぞれ共通の悩みをもっています.そんな子どもたちが,活動を通じていろいろ語り合っていました.その内容は,きっとわたしたち大人には計り知れないものがあるでしょう.このキャンプで何を得たか,何を思ったか,子どもたち1人1人に刻まれたことを大切にしたいと思います.

 みなさん,お疲れさまでした.たのしかったね!!

(にじいろキャンプ2016はマツダ財団と子ども夢基金の助成を得て行われました)

カヌーにのるのはじめてだよ!!
みんなで話し合い.よろしくおねがいします

話し合いをしたことは,必ず紙に書いて発表します

西条の盆踊りを楽しみました

白熱のバスケットボール.みんなで大汗をかきました


消しゴム作り.力作が並びました.

全員集合!!

2016年7月22日金曜日

おにいちゃんたち

 広島県では,梅雨が明け,学校も夏休みに入った.にほんごひろばU18は,夏休み活動,にじいろキャンプと,いそがしい夏になりそうだ!!

 にほんごひろばU18の活動は,2010年の夏休みにはじまった.参加第1号はN君だ.当時中学3年生,中国から来たばかりで,もちろん日本語は全くわからなかった.ほとんどが小学生の中,ひとり黙々と勉強していた姿を良くおぼえている・・・

 N君は20才になった.にほんごひろばU18(=18才以下)では卒業生というか,兄貴分という感じになっている.とはいっても,通常のU18に来ることはほとんどない.彼が来るのは大人の会話クラス「にほんごわいわい」だ.
*にほんごわいわい:東広島市教育文化振興事業団が主催する大人向け会話クラス.留学生,永住者,技能実習生など多様な人たちが,楽しく会話をすることを通じて日本語の力をつけることをめざしている.

 ところで,にほんごひろばU18に来る子は大きく3つに別れている.
①小中学生:学校に通い,宿題など自分の課題をもってU18にやってくる
②高校生:気が向いたときにやってくる子が多い.中には(定時制高校)登校前に日本語の勉強をしていく子もいる
③ハイティーンプロジェクト*:16才以上で(親の都合で)来日し,高校など通う学校がない子どもたち.アルバイトをしている子もいる.日本語の基礎をきちんと習得することをめざして,通常活動においてテキスト学習を行う.

 実は③の子どもたちは,当初「にほんごわいわい」に来ていた.しかし,大人を対象としているクラスなので,話の内容について行けない,基礎からの積み上げができないなど,問題点が浮かび上がってきた.そこで,新しいプロジェクトとなった次第である.

 そして最近,この3つに収まらない,第4のカテゴリーの人物たちが浮かび上がってきている.もともとU18に参加していたが,高校中退,仕事など,様々な事情でU18から遠ざかり,最近「にほんごわいわい」参加によって復活してきた子どもたちだ.その筆頭がN君で,さらにM1君,M2君などがいる.

 N君は2010年の夏から今まで,高校中退,交通事故,帰国,再来日,仕事も転々とするなど,多くの問題を抱えていた.ヤッチャルメンバーは「大変だなあ」と思うのだが,本人はいつもへらへらした感じで,なにも考えていないような雰囲気が漂っていた.「将来なにしたいの?どんな仕事に興味があるの?」と聞いても,さあねえ,わかんない,ラーメン屋の仕事なんかこりごりだよという答えしか返ってこなかった.日本語の力が不十分だったから,自分を表現することができなかったというのもある.それ以上に,こういう子どもたちに特有というか共通している「考えたって仕方ないから(無意識に?)考えることにフタをする」という状態になっていたようだ.それでも「にほんごわいわい」にくるのだから,何かを求めていたことだけは確かだ.

 そんな彼らも,まがりなりにも仕事をする中で,日本語を身につけてきている.ようやく自分を語ることができるようになってきた.そうなると,心の中を絞り出すようなことばが飛び出してくる.わたしは目を見張った.

「人生で消したいこと(=忘れたいこと,失敗の記憶など)」というトピック(にほんごわいわいの話題)には,名言が飛び出した.
「いちばん消したいことは,いちばん忘れられないことです」(実はN君にとって,それは事故でのケガだった.すさまじい痛みだったようだ.思い出させてゴメンN君)

 N1君は「15才で日本に来た.日本語はわからなかった.学校へ行ったけど勉強はわからなかった.いまは仕事をしている.朝早くから夜まではたらいている.日本語は何とかできるようになった.でも心に余裕がない.余裕がほしい」と綴った.

 学校へ行ったとき,そばでサポートする人がいたら,彼の人生は変わったかもしれない.今は,にほんごわいわいの日本人ボランティア,そしてヤッチャルメンバーもいる.彼に関心をもち,少しだけでも寄り添う人がひとりでも増えてほしい.

 N1君は,できれば専門学校に行きたいと言う.しかし何を学ぶか,自分には何ができるかがまだ見えていない.加えて日中の学校システムの違いもあって,高校卒業資格に問題がありそうだ.中卒で入れる専門学校は,非常に限られている・・・

 親の都合で自分の意志に関係なく母国を離れ,日本という異文化,そして日本語という第2言語で生活することを強いられている子どもたち.そんな子どもたちが青年になり.ようやく少しだけ自分を語ることができるようになった.わたしたちは,『おにいちゃんたち』の叫びに,真摯に耳をかたむけなくてはならないと思う(

どこでしょう?夏休みに行きたいね!









2016年6月21日火曜日

言いたいことがいっぱいあるんだよ!!

 今年の梅雨,広島県はたくさん雨が降っています.少ない地方,水不足の地方もありますね?そういうところでは降って欲しい,でも災害になるほど(今日の明け方:2016年6月21日)というのも困りものです.なかなかちょうどよくとはいかない・・・そんなジメジメした毎日ですが,U18のこどもたちはあいかわらず元気です.

 土曜日(2016/06/18)には,夏のにじいろキャンプ(3回目になります)の実行委員会を開きました.実行委員会の主役は子どもです.10人が集まり「あーでもない,こーでもない」納得のいくまで話しあいました.集まった10人は中学生〜高校生(相当)で,全員中国から日本へ来た子どもたち.3ヶ月前に来た子から,すでに滞在3年になる子までいます.日本の学校へ通っている子がほとんどですが,16才以上で,学校に通っていない子もいます.

 話し合いの内容は,全員が集まる時間に何をするか,自己紹介をどうやってするか,みんなが楽しめるゲームはないか,グループ分けをどうするか,などなど・・・しーんと黙っている時間はまったくありません.誰かが「こうしよう」といえば,すぐに「こっちの方がいい」「そんなのより,こうしたほうがいいよ」
 特に「日本語がわからない子にはどうやって伝えるの?」「各グループに日本語のうまい子を配置しなきゃだめだよ」というやりとりには感心しました.ちゃんと全体(みんな)のことを考えている!!

 実は,その話し合い,ほとんど中国語で行われました.本当に『水を得た魚』のように生き生きと意見を言う子たち.ということは,さぞかし日本の学校では歯がゆい思いをしていることでしょう.言いたいことはたくさんあるのに,日本語だとうまく言えない,言えなければ黙っているしかない.ため込んでいたんだねえ(~_~;)

 自分たちのために自分たちで行うキャンプ.大人が計画したものに乗るのではなく,子どもが主体となるキャンプ.今年のにじいろキャンプのテーマです.理想的なことですが,言うは易く行うは難し!!でも,この子たちなら大丈夫!!心からそう思えた第1回実行委員会でした.

 ただし,最後にひとこと言わせてね.実際のキャンプには,ブラジル,ベトナム,フィリピンなどの仲間も来るよ!その時は,みんながわかるように日本語で話そうね!
あーでもない,こーでもない,白熱の(?)話し合いは続く


 

2016年5月23日月曜日

数字って難しい!!

 ゴールデンウイークは,もう,はるかかなたになってきた今日この頃です.U18の子どもたちは,元気に学校へ行っています.そして火曜日,土曜日にはわいわいがやがやU18にやってきます.そんな風に元気な子どもたちですが,最近ちょっと気になる子がいます.

 小学校3年のFちゃん.アジアの中央部からやってきて半年.人なつこくて,物怖じせず,ニコニコと話しかけてきます.家庭環境も良く,本当に『子どもらしい子ども』という感じで,クラスでも人気者のようです.

 そんなFちゃんが,今苦労しているのが九九です.日本では九九を習って,何回も何回も練習して,暗唱するのが2年生.3年生なら完全にマスターしていることが求められます.Fちゃんが来日したのは2年生の冬ごろ.母国では九九をようやく始めたという段階だったでしょうか.

 九九をおぼえるのに必要なのは,まず数字がきちんと言えること,読めること(書けることも).Fちゃんは当然,母語で数字をおぼえています.足し算,引き算,少しの九九は,初めは母語でぶつぶつとつぶやいていました.しかし,おそらく大きい方の数字は,言い方も概念もまだ定着していなかったようです.これが今になって影響しているのか,九九の6の段以降がおぼえられません.日本語でも少しずつおぼえているのですが,7×6=43(しちろくよんじゅうさん??)など,惜しい(?)間違いが目立ちます.ただし,これは言い間違いではないようです.答えを書かせてみても,正解でないことも多いです.母語でやっても,書いてみると間違った答えになってしまいます.ということは,どちらの言語でも数字を正しくおぼえていない,九九を暗記していない,さらには数の概念が入っていない可能性もあります.

 もう一つ問題なのは,おぼえ方です.九九の練習では,まず2×1=2(にいちがに),2×2=4(にんんがし)・・・2×9=18(にくじゅうはち)のように,順番に暗唱します(のぼり).繰り返し練習しておぼえます.日本では,その後くだり(「にくじゅうはち」からスタートして「にいちがに」まで),ランダム(さんごじゅうご,ろっくごじゅうし,はちしちごじゅろくなど,段にとらわれずに練習する)もたくさん練習します.
 しかし,Fちゃんは,にく?(2×9=?)と聞くと,にいちがに(2×1=2)から順番に言わないと,「にくじゅうはち」が出てきません(2の段は何とか日本語で言えますが8の段はまだ日本語では言えません).Fちゃんを見ていて,日本式ののぼり,くだり,ランダムの練習方法が,すごく理にかなっているということがよくわかりました.

 は,最近これを身をもって体験しました.
 実はゴールデンウイークにフランスを旅行してきました.フランス語を使うのはなんと30年ぶり.大学の第2外国語以来ですが,少なくとも1から10までの言い方はおぼえています(もちろん11以上も『知って』います.60からの言い方が複雑だと言うことも知っています).でも・・・
 旅行中,「そのケーキ4個ください」のように,数字を言う機会は何回もありました.ところが,いきなり4(quatre,キャトル)がでてきません.un(アン),due(ドゥー),trois(トロワ)と順番に数えてやっとキャトルが出てくる.4(キャトル)でもそうですから,25とかになったら推して知るべしです.さらに,フランス語は60からの数え方が複雑なので,75とか98なんか,もうおてあげっていう感じでした.

 フランスで,Fちゃんの苦労が良く分かりました.日本語は数字の言い方に例外が少ないので,言いやすい,おぼえやすいと思っていましたが,こんな落とし穴があったのです.数字を勉強するとき,1から順番に数えるだけでなく,フラッシュカードのように,ランダムに数字をいう訓練が必要だなと思います.九九も登りができたらOKせず,下りもランダムも繰り返し練習する方がよさそうです.

 <参考までに>の子どもは10才〜12才のとき,学習言語が英語になりましたが,九九は日本語でマスターしていました.彼女は英語で「Twice(two) two are ?」と聞かれたとき,すぐfourと英語で答えられなくても4と書くことは問題ありませんでした.結局九九は今でも日本語でやっています.

 いわゆる臨界期前の子どもの言語(学習言語)を変えることには,非常に大きなリスク(危険性)が伴います.このことを(連れてきた)親は本当に知っているのかどうか・・苦労するのは子どもです.


パリの町とエッフェル塔

「エクレア4つください」」

 

 

2016年4月19日火曜日

通訳がいるとこどもは『安心』する

 きょう(4月19日)はマツダ財団助成金贈呈式に参加しました.この助成金をいただけたので,今年のにじいろキャンプは,ばっちり実行する予定です.子どもたちの意見を聞きながら,子どもたち主体のキャンプにするよう,みんなで協力していきましょう!!

 さて,今年度からヤッチャルと東広島市が連携して,学校への通訳派遣が始まりました.外国につながる子が転入するとき,数日間(子どもによって違う)通訳がつきそいます.昨年から,非公式に(ということはボランティア!!ということです)実施していましたが,今年度は公式な派遣ができることになりました.

 その第一弾として,アルジェリアからきた小学校3年生のために,アラビア語のできる方が2日間学校へ行きました.学校の担当者であるによれば,たいへん効果があったようです.何もかもわからず不安な中で,母語のわかる人がいる,学校での行動を説明してもらえる.子どもにとっては本当に安心なことですね.

 その子の疑問の一つが「どうして,廊下は右側を歩かなくちゃいけないの?」
たしかに,交通事情の悪い国では,こういうことはあまり守られていないかもしれません.「ぶつからにように,安全のためだよ」というと納得していたそうです.

 こどもが日本の学校で気持ちよくすごすために.能力を発揮することができるように,やるべきことはまだまだたくさんあるぞ!!

春のバスツアー:江波山気象館で台風を体験しています
マツダミュージアムでクルマの歴史を勉強中!

2016年3月23日水曜日

安倍さんの『お言葉』

  ばたばたバタバタ,師走という言葉は日本では12月より3月の方がピッタリくるようです.

 3月22日の教育再生会議で,安倍首相が日本に暮らす外国の子どもたちについて述べました.
「小中学校ではこれまでも手厚い教員配置や研修などを行っているが、今後、子どもたちの力をさらに伸ばし生かすため、高校等での教育も充実し、進学や就労の拡大につなげることが必要だ」
(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160322/k10010452651000.html)
 
手厚い教員配置や研修ってほんとかいな?とは思います.でも今回の注目点は「高校等での教育も充実し,進学や就労の拡大につなげることが必要だ」の方です.
 広島県では,公立高校入試で,外国につながる子どもに対する配慮がありません.受け入れ校,受け入れ枠,試験問題のルビうち,時間延長,辞書持ち込みなど,ほんとうに何にも無いのです(後述しますが,奈良県の先生方が驚いていました!!).

 そんな厳しい環境の中で,今年の高校入試が終わりました.U18に関わった子どもは定時制に3人,全日制2校に1人ずつ合格しました.全日制は東広島地域ではレベルの高い方の高校です.来日5〜6年でこのレベルの高校に受かる実力をつけた2人はすごいです!!

 さらに定時制では奇跡(?)が起きました.一度不合格になった子が三次(欠員)募集に再トライして合格したのです.過去にこのパターンで不合格になったことがあるので,今回,だれもがあきらめムードでした.

 そこに試験日にあわせたような安倍さんの『お言葉』です.もしかしたら(高校の)背中をおしてくれたのかもしれません!逆転合格になり本当によかったです.

 さて,は奈良県に行ってきました.「奈良・子どもの日本語教育ネットワーク」立ち上げシンポジウム(3月20日)に参加するためです.U18でずっとボランティアをしてくれて,子どもたちに人気絶大のYさんが呼んでくれました.Yさんは,今奈良市ではたらいています.久しぶりに会えてうれしかったです.
 シンポジウムには,いろいろな方が参加していました.公立夜間中学教師,自主夜間中学の関係者,特別支援教育の先生,県教委,市教委,大学の先生,ボランティア・・この多様性には,東広島はまだ追いつけていません!!


 奈良の前日,伊賀上野にも行きました.ここはなかなかの活動が展開されています.特におとなのクラスはおもしろかったです.実力のある(自主的に学んだからついた実力です)ボランティアが授業形式で教えています.とはいっても会話中心で楽しそうなおしゃべりが続きます.特に現職校長先生が,身振り手振り,スキンシップも交えながら,本当に楽しそうに授業をしているのには,目を見張りました.忙しいのに,ボランティアが楽しくて仕方が無い!!という感じです.さらに受付では80代の素敵な女性が,てきぱきと学習者を誘導していました.

 多様な人々がうまくかみ合っていけば,ホントに大きな力になるんだなあ・・・これからの東広島の課題です!


朝日の中で@奈良公園


ユーモラスな狛犬
ほっこりする狛犬

2016年3月12日土曜日

私は国に帰りたいです

 みなさんご無沙汰しております.3月になりましたが,まだまだ寒い東広島です.にほんごひろばU18のこどもたちは,相変わらず元気です.今日は中学の卒業式でした.2人が卒業し,在校生たちも出席しました.来週は小学校の卒業式です.子どもたちは新しい世界へと羽ばたいていきます.

 でも,新しい世界になじめず,もがき続けている子もいます.自分の国から日本へ来る.言葉が変わる,文化も変わる.友達と別れる,家族と別れる.子どもにとって,本当に過酷なことです.それを親の一存で強いられてしまう.外国につながる子どもたちの試練と苦悩・・・そんな子どもたちの心の叫びに,私たちはなにをしてあげられるのでしょうか.みなさんも,耳を傾けてみてください

 Kさんは今年18歳。日本に来てからずっと国に帰りたいと言って、日本語の勉強は全くしていません。それでも,U18や日本語教室には時々やってきます.ある日はと話して、少しだけ「~たいです」の文型を勉強して帰りました。この文型を使って彼女が書いたのが私は国へ帰りたいです
これこそ彼女の心の叫びです。

以下はKさんと(ボス)の会話です.会話中の「にほんごわいわい」はおとな向けの日本語クラスの名前です.対話型のクラスで,ボランティアと学習者が楽しく会話をしながら日本語を学んでいます.

K:国に帰りたい。日本語を勉強してもすぐ忘れるし、日本語の勉強は私にはあまり意味がない。
:国に帰っても大丈夫なの?
K:(国の)お父さんには帰りたいと言っている。帰ったらお父さんと一緒に住めると思う。

:お母さんは何と言っているの?
K:日本にいてほしいとずっと言っていて、国に帰るのは許してくれない。1年半前に日本に来た時も、ちょっと遊びに来るだけと思ってきた。でも来てみたら、帰れなかった

:そう・・・
K:おじいちゃんもおばあちゃんもいるし・・友達もいる。日本では友達もいない。
:K君(彼女のボーイフレンド。彼もたまに「にほんごわいわい」にあらわれます)は?
K:いつも昼は仕事だし・・・中国の友達と、インターネットでよく話している。

:そうか・・・
K:中国に帰ったら、昼は働いて、夜友達と話したり、どこかに行ったりして楽しく遊べる。

:将来どうしたいの?
K:服飾関係の仕事とか、美容師とかしたい

:そう。Kさんはおしゃれだからきっとあってるね。
K:中国ではダンスを一生懸命やっていた。ジャズダンスなんかやっていて、大会で2位になったこともある。

:へー、才能あるんだね。
K:才能があるかどうかわからないけど、先生に褒めてもらった・・・ダンスは好きだったんだ。

:そうなの・・日本でも習ってみる?西条にもダンススタジオがあると思うよ。
K:うーん。もう一年以上もやってないし・・日本語わかんないしね・・

:ダンスは日本語いらないじゃん。
K:そんなことないでしょ。ダンスはすきだけど、日本で習わなくてもいいよ。とにかく帰りたいんだ・・日本語も勉強したくない。

:1日家で何してんの?
K:ごろごろしてる。10時か11時ごろ起きて・・インターネットしたり、インターネットで中国のテレビ番組見たり

:若い人が一日なにもしないのは体にも、心にもよくないよ。ちょっとさ、私の助手とかしない?
K:何するの?

:日本語わいわいに来てさ、助手しようよ。
K:だって日本語勉強したくないし・・・

:いいよ勉強しないで。わいわいは結構忙しくて、一人だと大変なんだ。
K:ふーん。

:名前のカード配ったり、おかしくばったり。机を並べ替えたり・・結構いろいろやることあるよ。
K:ふーん。

:来てみない?どうせ暇でしょ?
K:そうだね。家にいてもつまんないし・・・

:じゃあおいでよ。まってるよー。
K:うん。

こんな会話を火曜にして、水曜のにほんごわいわいに来るかなあ・・と半分あきらめていたのですが、やってきました。金曜の午前のにほんごわいわいには来なかったのですが、夜のクラスには参加しました。帰りのバスの中で・・


:どうだった?
K:まあまあだね。

:また来てみる?
K:うん。そうだね・・・



「ちょっと遊びに来るだけと思ってきた。でも来てみたら、帰れなかった。」
多くの子がこのように,だまされたような状況で日本に来ています.いくら子どもだからって,これはないでしょう.

 Kさん,ほんの少しでいいから,家から外に出てだれかと触れあってみようよ.にほんごわいわいのクラスは♪が担当しているからね.待ってるよ!!


酒処西条は新酒の季節です!!



2016年2月2日火曜日

ヤッチャル初の修学旅行(???)

 2月になりました.まだまだ寒い毎日ですね.そんな寒さにもめげず,2010年のヤッチャル創設以来初めての『修学旅行(?)』に行ってきました


 1月30日と31日,島根県浜田市で子どもの指導に関する研修会がありました.子どもの指導について勉強する機会はそれほど多くありません.ちょっと遠出になるけど,こりゃなかなかいい機会です!
 2日にわたる研修で,1日のみ参加を含めてなんとヤッチャルメンバー8人が参加しました(地元島根県からの参加者と同数くらいだった・・・).
 
 1日目の研修では,講師の坪内先生がご自身の豊富な経験の中から,いろいろな実例を紹介してくれました.自分たちがかかわってきたこと重ね合わせながら,あれってこういうことだったんだ,もっとああしてあげればよかった,あれで良かったんだ,などいろいろな思いが交錯しました.リアリティのある話は説得力があり,貴重な学びになりました. 
 
 2日目は4つのグループに分かれて,模擬授業を考えて実演(?)しました.低学年,学校3日目という初期指導から,中学生で来日1年くらいの生徒の数学(文字式)指導まで,バラエティに富んだ設定で熱演(?)が続きました.ヤッチャルメンバーは3人が先生役になりましたが,さすが!!という指導を見せてくれました.これまでもメンバー同士レスペクトしあってきましたが,あらためてお互いを『尊敬!』する気持ちが一層強くなりました.これは今回の修学旅行の最大の収穫でした.
 
 そして,せっかくの修学旅行ですから,勉強だけではおもしろくない!しっかり食べて飲んで歌い??)ました.そりゃ〜〜浜田ですからお魚,お酒を楽しまない手はありません.加えてホテルは居酒屋の目の前.何時に帰っても文句を言う人(?)はいない!!この状況で楽しまずにおくものか!!!熱い語り合いの中で,今後定期的な連絡会(勉強会)を行いたい,自前教材も作成したい,修学旅行を年中行事にしたい・・・夢を膨らませながら夜は更けていきました!


雪に覆われていた中国山地の山里(浜田道から)

ランチからしてこれでした!!!
夜のごちそう!
浜田の海は静かでした

2016年1月27日水曜日

数字で見る外国につながる子どもたち

前回「おおみそかになっちゃった」というタイトルで書いたが,今回はさながら「もう1月末になっちゃった!!」というところだろうか.(今回から文字を大きくしてみました)

 新年に入って早1ヶ月!!その間は,滋賀県で「多文化共生マネージャー養成講座」というのを受講しました.とてもハードな研修で,さいごは1人ずつプレゼンテーションをします.多文化共生に関わる3カ年計画を作る,というのがプレゼンのお題です.

 この課題で,は16才以上の外国につながる子どもたちを取り上げました.プレゼンの内容は語りませんが,その中で扱った数字が興味深いものだったので紹介します

☆東広島市の外国人人口(2015年)
中学生(12〜15才):72人
高校生相当(16〜18才):82人
なんと高校生相当の方が多いです!!

☆中学〜高校生年齢の時,U18に少しでもかかわった子:43人(2016年1月まで)
①高校進学:24人(中退2人)
*23人:日本の中学卒業(うち浪人後高校進学:2人)
*1人:外国からきて(日本の中学を経ずに)高校進学
②高校進学していない子:12人(うち日本の中学卒:3人)
③不明,帰国など7人

 高校進学者の大半は日本の中学を卒業しています.その一方で高校未進学者の大半は,16才以上で来日して日本の中学に入らなかった(はいれなかった)子たちです.こういう子にとって,高校進学は本当に難しい事だというのが良く分かります.

 でもそんな12人でも,ほぼ全員がアルバイトをしています.中には「月収30万近くいくよ!」(携帯電話の組み立て工場でグループリーダーになっている),「車を買った!!」なんていう子もいます.もちろん,こういう子は税金を納めています.でも,日本語や進学,将来設計に関して,ほとんどだれからもサポートしてもらえません.

 ヤッチャルとしても,これは見逃せない問題だと思っています.さいわい,最近こういう高校未入学の子たちが,おとなのにほんご教室や,個人指導希望という感じでちょくちょくやってきます.「これから日本で生きていくには日本語を勉強しなくちゃ!!」という思いが少しずつ芽生えてきているようです.

 そういう子たちの思いをどう受け止めるか,どういう日本語を教えていくのか,これはヤッチャルの大きな課題です.しっかり受け止めてあげなくちゃ!!でも難しいですよねえ・・・
研修をやったのはここです.とっても立派な施設!!